アドベンチャーとサイエンスフィクションがぶつかり合った、1954年に製作されたハリウッドエインターテイメント映画の名作。ジュール・ベルヌ原作の海中アドベンチャーは、ウォルト・ディズニーが手掛けた初めての実写映画。南北戦争直後、海底にすむ怪物という伝説の真実を探る学者(ポール・ルーカス)がいた。学者の乗る船が沈没してしまったとき、彼は助手(ペーター・ローレ)と、銛の名手(カーク・ダグラス)と共に、伝説の怪物が実はネモ船長率いる潜水艦であることを知った。傍若無人の冒険もそうだが、浸水用具や水中農園など、作者ベルムが小説の中で夢見た未来のテクノロジーがどんなものだったかを目にできるのも楽しい。赤い絨毯とパイプオルガンまで装備されたゴシック潜水艦ノーチラス号が、映画にずっしりとした存在感を与えている。壮大なセットが最盛期の時代に、海をテーマにした映画撮影の先例を作った本作が、オスカー(アカデミー賞)の色彩美術賞と特写撮影賞を獲得したのもうなずける。盛りだくさんのアイデアや巨大イカの襲撃セットなどに押されて目立たないが、主演俳優2人の演技もまた素晴らしい。メイソンは物静かで規律正しいネモ船長にぴったりだし、彼の黒っぽい服も、赤と白のストライプシャツ姿がまぶしいヒーロー、ネッド・ランドを演じるカーク・ダグラスとの好対照を成している。半世紀経った今でも楽しめる無類のファミリーアドベンチャー。(Doug Thomas, Amazon.com)
80年代、シャーデー印のエレガントなポップR&Bはヒットチャートを躍進(やくしん)し、このナイジェリア人の父と英国人の母を持つ歌姫は、そのサウンドを形容するのに("シャーデー的な"と)その名をとって呼ばれるアーティストの仲間入りをした。8年間の活動休止を経て、シャーデーとバンド(と長年のプロデューサーであるマイク・ペラ)は、彼女の芸術性をみごとに再確認させる、充実したソウルフルなアルバムを引っさげて帰って来た。おそらく本作で何より特筆されるのは、シャーデーが活動休止したのと同じ場所から始めている点である。したがって本作からはクールビートや、流行の音楽からの借り物やヒップホップの小細工は聞こえてこない。本作はまさにシャーデーの音楽であり、ファーストシングルの「By Your Side」で彼女は、優しくはかない翼に乗り表舞台に舞い戻ってきている。つまり、愛の力を取り戻すことをふたたび歌っているのだ。もちろんシャーデーは愛のやっかいさもよくわかっている。ダブ風の「Every Word」を聴けば、別れを認めて涙にくれることだろう。普遍的な視点ではなくあくまでひとりの女性の目線で見すえ、成長しながらもこり固まることのない本作は、本年屈指の1枚であり、本当の意味でオリジナルな音楽に立ち戻っている。(Amy Linden, From Amazon.com)
80年録音作。時期的にはボブ・ジェームスとのコラボレーション作『ワン・オン・ワン』と『クレイジー・フォー・ユー』の中間に位置する時代の作品だ。このアルバムは当時、よく聴いた覚えがある。なんといっても選曲が魅力的で、特に夜中に聴くとしんみりといい気分になる。「煙が目にしみる」という邦題で知られるスタンダードの、ブラジリアン・テイストが芳しい、ナット・キング・コールのヒット曲、ジョニー・マンデルの名曲などポピュラーな選曲が親しみやすく、デヴィッド・マシューズ編曲指揮のストリングス入りオーケストラをバックに目いっぱいソロをとるアール・クルーの生ギターがせつなく胸にしみるのだ。その後ワーナー時代にかけてクルーはスタンダードを頻繁に取り上げるようになるが、その原点となったアルバムが本作であり、クルーのスタンダード路線は本作から始まったといっていい。メロディの美しさを引き立たせるデリケートなプレイにうっとり。マシューズのしゃれたアレンジも素晴らしい。(市川正二)
名古屋出身のスリーピース・バンドによるメジャー・ファースト・アルバム。ミスチル直系のメロディ(UKロックからの影響を、日本っぽい情緒をからめながら旋律にしていく、あの感じ)と意外性に満ちたサウンド・アイデア(フォークロック、ハードロック、ピアノバラード、フォークロア調…)が彼らの音楽性の核だ。また、身近な情景を映像的に映し出しながら、そこに繊細な感情を描き込んでいく歌詞の世界にも、なかなか味わい深いものがある。やはり、多くの層に訴える力を持った曲を書けることこそが、彼らの強みなのだろう。スマッシュヒットを記録した「イエスタディ」も収録。「Spring Story」(sacra オリジナルドラマ 60分)とライヴ映像を収録したDVD付き (森 朋之)